脱ステロイドへの道①

脱ステロイド

天はときどき、アトピーがとんでもなくひどくなります。

それはもう、とんでもなく、です。

顔はただれ、全身はかき傷だらけになり、手の施しようがありません。

しかもその進行は短期間にスピーディーに行われ、「あれ?ひょっとしてひどくなっている?」と気づいたころにはもう、目も当てられない状態になっています。

直近の「目も当てられない」の始まりは、一年ほど前になります。まず症状が出たのは顔で、「とびひ」でした。原因はたぶん、長時間のマスク生活だとにらんでいます。マスクの中で雑菌が繁殖したのでしょう。

皮膚科を訪ねたところ、真っ赤にただれた顔に先生も「ひどいね…」と言葉を失い、即ステロイドを処方されました。もちろん、あまりにひどい症状をいったん止めるためには、ステロイドが必要でした。

しばらくしてとびひは治ったものの、肌の荒れは続きました。とびひに触発されたかたちで、もともとあったアトピーが顔を出してきたのです。

その後も、ひどくなると強いステロイドを処方され、よくなると弱いステロイドを処方されます。この繰り返しが一年近く続きました。この流れには、既視感があります。

今まで何度も、この経過をたどってきました。ステロイドの強い・弱いの変化に一喜一憂しながら、延々と皮膚科に通いつづける。

アトピーはそういう病気、といわれればそれまでです。よくなったり悪くなったりをくり返しながら、ずっとつきあっていくものなのかもしれません。けれどもわたしたちがお医者に行くのは、やはり治りたい、治してほしいと望むからではないでしょうか。

よくなったり悪くなったりのくり返しで、それでよしとする人は、まずいないと思います。

アトピーの治療にステロイドを使うことが医療のガイドラインになっていることは承知しています。しかしながら、天のアトピーに10年以上つきあってきてはっきりしたのは、「ステロイドでは天のアトピーは治らない」という現実です。

ステロイドそのものが悪いのではなく、天との相性とか、性格とか、発達障害とか、そういうものが影響しているのではないか、と考えています。事実、天兄にもアトピーがあり、ステロイドを要所要所で使ってきましたが、小学校高学年になるころにはすっかりよくなっていました。

とにかく、天にステロイドはだめだ。ほかの方法でなくては、この子のアトピーはよくならない。

とつくづく思い、天との話し合いの末、「脱ステロイド」に挑戦することになりました。

今までも何回か、脱ステロイドは行っていますし、そのたびにうまくいってはきました。しかしながら何年かすると、必ずアトピーが顔を出します。

そこでとりあえず皮膚科に行き、またステロイドが処方され…というくり返し。そのときにステロイドを使わない方法を選択すればよいのでしょうが、まずは目の前の、苦しんでいる天の症状を抑えたい。その気持ちのほうが勝ってしまいます。それに、もしかしたら今度は、天はステロイドで治るかもしれないではありませんか。

しかし、やっぱり天にステロイドは合わない、という現実をまたまた突きつけられてしまいました。もうこんな事態を二度と招きたくない、と思い、脱ステロイドを謳う、市外のお医者を訪ねました。

そのお医者では。

肌の表面の菌の検査のあと、

◎アレルギー体質改善のための飲み薬

◎かゆみ止めの塗り薬

◎悪化したときのための消毒液

を処方され、ステロイドを即止めるように言われました。脱ステロイドが、いきなり始まったのです。

リバウンドについての話もありましたが、今回ステロイドを使っていたのは一年未満と短かったので、副反応は出ないだろう、と楽観的に構えていました。今までも、そうひどい反応は出てこなかったからです。

ところが…一週間後くらいから、皮膚がごわごわし始めました。

 

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1回目のリバウンド

一回目

皮膚の表面が割れはじめ、かゆみが強く出てきました。処方された塗り薬だけでは、かゆみは止まらないようです。かきむしってしまうので傷だらけになり、そこから血とリンパ液がにじみ出て、からだ中から悪臭が漂い始めました。

 

顔全体がボロボロに…

皮膚の表面がめくれて体温の保持ができず、ひどく寒さを感じるようです。ふとんを何枚かぶっても、震えています。

かきむしってしまうのでからだじゅうが痛くて、とうとう起き上がれなくなり、寝たきりの状態になりました。食欲はあるのですが自力で食べる力が湧かず、ごはんも寝たまま食べさせてやりました。

肌が乾燥してしまうので、お風呂は三日に一度…と注意を受けていましたが、もちろん痛くて入れません。

皮膚は乾くと次から次へとはがれて、ふとんや床に大量に落ちます。掃除機だけでは吸いきれず、ほうきで掃くことにしました。この頃の皮膚の粉は比較的大きめで、ほうきで掃くのがいちばん集めやすかったのです。

本人によると、かゆみがほぼ6時間ごとにやってきて、そのときは全身がかゆくてかゆくて気が狂いそうになるそうです。そしてひどくかいてしまい、かゆみが治まったときには今度は全身が痛くて痛くてたまらなくなる。このくり返しです。

想像以上のリバウンドに、本当にこれでよいのか…?と本人を連れてお医者に相談に行ったところ、先生も看護師さんも、ボロボロでよれよれの天を見て「よくなっているね!」と喜んでくれました。見た目はゾンビのようになり、それはひどいのに、です。お医者に着くまで、クルマを降りて通りを歩いているとき、通行している人たちにけげんな顔でじろじろ見られていたので、医院内のみなさんの喜びように、異次元に入りこんだような違和感がありました。

先生が言うには、これは脱ステロイドで必ず通る道で、まったく問題ないそうです。ここが辛抱のしどき、だそうです。本当に…?

肌のかゆみは辛抱するしかないとしても、全身にダメージを受けているので、ショック症状を起こして突然心臓が止まったりしないだろうか…と、ひんぱんに天のようすを見に行っては、頭をなでる以外なすすべはありませんでした。頭には何も症状が出なかったので、なでてやるとしたら、頭しかなかったのです。

 

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2週間でいったん回復

回復

寝たきりの、先の見えない状態が続きましたが、約2週間ほどで肌の状態は急激に治まり、起き上がれるようになりました。ちょうどお正月で、家族みんなで祝うこともでき、おじいちゃんおばあちゃんたちに元気な顔を見せることもできました。

あんなにお医者で、リバウンドリバウンドと強く言われたけれども、結果的には期間は短かったし、喉元過ぎれば熱さ忘れるでたいしたことなかったなあ…などとのんきに話していたのもつかの間、松の内が明けたころに、すぐに2回目のリバウンドがやってきたのです。

→「脱ステロイドへの道②」につづく

 

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学習塾を経営しながら、発達障害グレーゾーン中学生の息子・天を絶賛子育て中。 楽しかったり楽しくなかったり、うれしかったりうれしくなかったりする天との毎日を、母の目から率直につづります。