発達障害児を、スマホ依存にさせない

天にスマホを持たせることにする

発達障害 スマホ

子どもにはいつ、スマホを与えたらよいのでしょうか?

これは永遠のテーマですね。

家庭ごとに考えがあり、答えがあると思います。

わが家でも、長い間お預けだったスマホを、天に持たせることにしました。これには理由があります。部活の連絡がLINEで回っており、時間変更の連絡が天に伝わらなくて待ちぼうけをくらうことが重なったからです。これはさすがに見逃せず、スマホが必要だと判断しました。

ただ、天にスマホを持たせることには、大きな抵抗がありました。

天ももちろん、今どきの子どもらしくスマホには早くから興味があり、小学校のころから「スマホがほしい」と言われてきました。でもいちど与えると際限なく使ってしまうのではないか、いわゆる「スマホ依存」になって生活が乱れてしまうのではないか…と不安でした。ですから、ルールが守れるようになるまでは絶対に与えない、と宣言してきました。

特に発達障害の子どもの場合、スマホ依存になりやすいと言われています。限度が分からず使い放題になり、外とのつながりがなくなりがちです。天も「ほどほど」がわからないたちですから、スマホに夢中になって周りの世界が見えなくなり、そのうちに引きこもりなどの大きな問題につながってしまうのでは…と心配が尽きませんでした。

 

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現在、スマホは生活になくてはならないツールになっています。電話やメールなど外部との連絡はもちろんのこと、調べもの、お財布、行政上の登録や申請など、多くの機能を備えています。

問題は、スマホは生活上必要なツールであると同時に、娯楽の機能も備えているということです。たとえば、家の固定電話の場合、電話としてしか使えませんから、必要でないときは使いません。けれどもスマホはどうでしょう。電話であると同時に音楽を聴くこともでき、ゲームをすることもでき、本を読むこともでき…と多機能です。子どもに与えるときに、どこまでが必要でどこからが必要でないのか、どこまでを使える範囲としてどこまでを制限すればよいのか、線引きがとても難しいのです。

天専用のスマホを与えることには不安がある、けれど必要であるならば。

苦肉の策で、まずは連絡用限定として、わたしの古いスマホを使わせてみることにしました。wi-fiのあるところなら使えますので、家で使うぶんには問題ありません。

天が必要だというアプリ、LINE、インスタグラムとツイッターをインストールして、天に渡しました。

ルールも決めました。

●使用は夜8時まで。

●ピアノの練習は早めに済ませる。

●成績を上げる(そのために必要な勉強をする)。

条件は、この3つ。本当はもっとたくさん条件をつけたかったのですが、そうなると天の場合、逆に守れなくなると考え、シンプルにしました。もちろんこれらは、毎日きちんと守られなければなりません。例外はなし、です。

天は、本当に喜びました。天の無邪気な笑顔を見たのはひさしぶりです。こんなに喜ぶのなら、もっと早くに与えてやればよかった、とちょっぴり後悔したくらいです。

まずは、部活のLINEデビューから始まりました。次にツイッターのアカウント作り。壁紙を好きな仮面ライダーに変え、自分仕様にして楽しんでいます。

そして現在のところ、意外なことに、天はルールを守っています。スマホは天にとっては何よりも大切なものだったようで、使えなくなっては困る、という危機感もあるらしく、ルールを守ろうと決めているようです。

でも先日、守れなかった日がありました。春休みでだらだらと寝てしまい、勉強もピアノの練習もしなかったのです。

ルールが守れなかった次の日は、スマホが使えません。絶対見つからない秘密の場所に隠すことにしています。

けれども、天が「LINEで連絡が来ているかもしれないから、10分だけ使いたい」と言ってきたのです。

確かに大事な連絡が来ているかもしれません。でもここで譲歩しては、また同じことをくり返すことになってしまいます。そうなれば、ルールを決めた意味がありません。「だめ」と強く言いました。なぜかと言えば「ルールだから」。

その後一時間にわたって、天は「なんで使わせてくれないの。10分だけと言っているのに」「お願いお願い」「これからはちゃんとやるから」と、涙を流しながら強く迫ってきました。

これはいつものことです。

「これからはちゃんとやるから」と予告して、天がそのとおり実行したことは、今までにありません。自分の願いがとおれば、そこですぐに約束を忘れるのが、天なのです。

泣き叫びつづける天を見ながら、「忙しいのに、いつまで続くのだろう」とうんざりしつつ、「今日はだめ」をくり返しました。途中、ここで折れたほうがよいのか、迷いが生じる瞬間もあります。半ばあきれ、まるで他人を見るような冷めた気持ちも生まれてきます。けれどとにかく、こちらもあきらめず、「今日はだめ」とくり返しました。

そこへ夫が帰ってきて、ごはんの用意をする必要ができたので、話は唐突に終わりとなりました。

でも、これが結果的によかったのです。天の強情につきあう一時間はとてつもなく長く、疲れ果てましたが、天はこれ以降、約束を守れなかったときは潔く、スマホの使用をあきらめるようになったのです。

 

 

スマホを持たせて、よかったと思うこと

スマホを持たせてよかった

スマホを持ったら、天がますます扱いにくい子どもになるのではないか…とよくない予想ばかりしていたわたしですが、意外にも、よい面もありました。

天は、仮面ライダーのファンです。ただ、まわりには仮面ライダーが好きな友人がおらず、だれかと仮面ライダーについて語り合う、というような楽しい経験ができずにいたようです。

天はツイッターで、仮面ライダーファンであることを公言し、仲間を増やしています。同じ趣味を持つ仲間が、ぞくぞく集まってきているようです。同じ話題で盛り上がることができる仲間がいることは、天にとってはとてもうれしく心強いようです。そのためか、毎日とても機嫌がいいのです。

このようなことは、まったく想定していませんでした。天のようにオタク的な趣味を持つ子どもの場合、ネットによってしか仲間とつながれないケースがあります。そして、天は現在放映中の仮面ライダーについて意見を交換したり、新しい知識を得たりしていることをうれしそうに報告してくれます。好きなものを通してつながる仲間というのは、心を豊かにするだけでなく、存在を肯定し、自信を与えてくれるものなのだと知りました。また、ふだん人づきあいに消極的な天が、仲間とつながろうと自分から発信する積極性を持っていたことにも、驚きました。

 

 

思いがけずうまくいっている

思いがけずうまくいっている

天がスマホ依存になることを心配していましたが、今のところ、そうなってはいません。LINEとツイッター、インスタグラムだけで十分に満足しているようです。

これにはびっくりです。

絶対スマホを手ばなせなくなるだろう、と予想していたからです。天に関しては、「思いがけずうまくいった」ことなど、ほかにありません。

なぜ(今のところ)スマホ依存になっていないのでしょうか。

まず、機種が古くてゲーム類ができないということも、スマホを使い過ぎない理由に挙げられると思います。やはり、子どもにとってのスマホの魅力は、ゲームができる点にあるのではないでしょうか。その証拠に、天はときどき夫のスマホを使ってゲームをさせてもらっています。そして、なかなかやめられません。やはり、スマホ依存の芽はじゅうぶんに持っている、と確信しています。

ふたつめは、どうやら、リアルの世界のほうが天にとっては魅力があるから、ではないかと思っています。

もちろん仮面ライダーは好きですが、演劇部のみんなのほうが好き。たとえ必要以上に親しくしていなくても、クラスの友だちのほうが好き。ピアノの先生のほうが好き。かわいがってくれる天兄のほうが好き。仮面ライダーについてネット上でどんなに盛り上がったとしても、天の目的は、それを家族に報告して、家族が共感してくれることのようなのです。

これにも、わたしは驚きました。

天は周りにまったく興味がない…と思いこんでいましたが、実はそうではないらしいのです。必要以上に興味はないかもしれないが、想像していたよりも興味はあって、現実世界でこそ存在感を示したいと思っているようです。

まさに、天の意外で新しい一面を発見した、というわけです。

けれども、油断はできません。今のところはうまくいっていたとしても、長い時間のうちには、また変化していくでしょう。スマホを与えて失敗した…と思うときも来るかと思います。天のようすにあわせて少しずつ軌道修正しながら、進んでいこうと思います。

最後になりますが、まとめておきたいと思います。子どもにスマホを与える前に、考えたほうがよいこと。それは、ひとつには、おたがいが納得するルール作り。ふたつめは、子どもが現実空間に居場所を持っているかどうか。このふたつを押さえれば、ご家庭それぞれのスマホ対応が見えてくるはずです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

 

 

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学習塾を経営しながら、発達障害グレーゾーン中学生の息子・天を絶賛子育て中。 楽しかったり楽しくなかったり、うれしかったりうれしくなかったりする天との毎日を、母の目から率直につづります。