子どもが発達障害だったとき、学校に相談すべきかどうか。
これは、親として迷うところです。
天のように、グレーゾーンで目立った問題がなく、特別な手助けが必要ない場合は特に、です。
まず、学校に相談することのメリットを考えてみたいと思います。
学校に相談することのメリット
いちばんのメリットは、「学校側が理解してくれている」という、親の安心感が生まれることです。発達障害の子育てには悩みがつきものですから、共有してもらえる相手がいるということには、大きなメリットがあると思います。また、何か問題が起こったとき、すぐに連絡をとりあって常にベストな選択ができる点も挙げられます。
では、デメリットとはなんでしょう。
学校に相談することのデメリット
それは、相談することで「おおごと」になってしまう、という一点ではないでしょうか。
天の場合、中学に入ってからは先生に相談はしていません。これからも相談しないだろうと思っています。それは、「メリット」と「デメリット」を比較した場合、(現時点では)デメリットのほうが大きいと判断したからです。
それには、ふたつ理由があります。
まず、天には大きな問題行動がないことです。
もちろん授業中手を挙げて発言しないことや休み時間もひとりでいること、友だちを作ることに興味がないなど、変わった行動はいくらでも挙げられます。
けれども、それらは「個性」としてとらえられなくもないものばかりです。「ちょっと変わってるなあ~」くらいに。
学校にはいろいろな子どもがいます。40人いるクラスの中で天を見たとき、天は「ふつうの子」に入るでしょう。
それならば、いつか問題が起こっていよいよ、となるまでは、そっとしておくのも、ひとつの手ではないでしょうか。
わたしは、親が自分の子どもを見る目がいちばん厳しいと思っています。存在するだけでうれしかった赤ちゃん~幼児時代を過ぎ、人間としての輪郭がはっきりする中学生にもなると、たいていの親は「うちの子は全然だめだ。小さいころはいい子だったのに」と思う親が多いのではないでしょうか。他人が見るとそうでないことでも、気にして悩んでいることもしばしばです。それならば、子どもをきゅうくつにしないために、他人が見るようにおおらかに見ておくという選択もあってよいと思います。
ふたつめは、天の気持ちです。
中学に入って懇談が迫ってきたとき、天が「先生にへんな話はしないよね?」と確認してきたのです。
なぜそんなことを言うのか?よくよく話を聞いてみると。
天の発達障害の疑いをはじめて先生に相談したのは、小学6年のときです。これをきっかけに、天は発達障害の診断を受けることになりました。
くわしくはこちらをご覧ください。
これ以降、先生が、ことあるごとに天をチラッチラッと注意して見るようになったそうです。もちろんそれは、天が困っていないかを気遣う、先生の思いやりからです。けれど、その、いつも気にかけられている「特別な感じ」がすごくいやだった、と天が言うのです。
中学ではふつうにやりたいのだと。あんなふうに気を遣われたくないのだと。だから先生に話をしないでほしい、と、天は涙を流しました。
それを聞いて、わたしも涙が出そうになりました。
確かに中学に入ってから、天はがんばっています。朝起きるのはギリギリですが、遅刻は一回もしていませんし、忘れものも減っているようです。胸ポケットにメモ用紙を入れ、次の日の持ち物など連絡事項を細かく書きこんでいます。これは、天にとっては大きな成長です。
また、天は中学に入ってから、ある委員をやっています。
天のクラスでは、七夕に向けて目標を短冊に書き、教室に貼っていたようです。持ち帰った短冊には、こうありました。
「〇〇委員の仕事を、失敗なくできますように」
この「失敗なく」という部分を読んで、わたしはまた、涙が出そうになりました。
自分は失敗するかもしれない、という不安が根底にあり、だからこそ、たとえうまくやれなくても、最低限失敗だけはするまい、という、痛々しい天の決意を感じたからです。
家では問題行動だらけでも、こんなけなげな気持ちを持っている限り、それは最大限に尊重してやりたいと思っています。
でもまた、いつかこの気持ちは変わるかもしれません。
それでよいと思っています。
発達障害の子育て、なんでもあり。
そのときどきの気持ちを信じてやっていくしかありません。
そうやって、乗り越えていきたいと考えています。
最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。