レジ袋有料化で、ショップが失うもの

レジ袋

レジ袋が有料化されて、一年以上がたちました。

わたしももちろん、買いものに行くときは、エコバッグを持参します。どんなエコバッグがよいか、ずいぶん試行錯誤を重ねました。今は、ニューヨーク在住の友人からおみやげにもらった、トレーダージョーズのエコバッグに落ち着いています。軽くて丈夫なうえに容量があり、ポロプロピレン製でさっと水で洗え、清潔に使えるからです。

レジ袋有料化については賛否両論ありますが、わたしは反対派です。レジ袋というのはよくできています。軽くて丈夫、折りたたむと小さくなります。新しいレジ袋に、店員さんが商品をていねいにつめてくれる。そのレジ袋を持ち帰り、ゴミ袋に転用できる。ありがたいなあと思っていました。そして、商品の中に、レジ袋の値段も含まれているのだと認識していました。

ですから、環境を大切にする気持ちはもちろんありますが、レジ袋を有料化すればすべて解決するような風潮には、納得がいきません。

特に残念なのは、おしゃれな雑貨屋さんなども、こぞってレジ袋を有料化したことです。もちろん、小売業すべてでレジ袋の有料化が義務化されましたから、雑貨屋さんも含まれます。けれども、プラスチック製のレジ袋だけならまだしも、紙バッグなどもそろって有料化されました。

スーパーやコンビニで行うのは、日常的な買いものです。野菜やお肉、魚などの食料品や、洗剤、歯ブラシなどの日用品を買いに行きます。それらが少々くたびれたエコバッグに、ごちゃごちゃに詰め合わされることになっても、がまんします。

けれども、雑貨屋さんは違います。雑貨屋さんは、夢を売っている場所です。ときどきそういうお店にわざわざ出かけて、かわいい文房具や化粧品を買う。それは、生活の中の楽しみであり、潤いです。時間をかけて選んだ商品を、まずは紙袋で包み、かわいい紙バッグに入れてもらう。それを片手で提げて、うきうきと家に帰り、包装をほどく。中から、新品の商品が顔を出す。その過程のすべてが、買いものの喜びでした。よく、海外の買いもの事情との違いが強調されますが、ていねいな包装は、日本の文化だと思っています。

ところが。

たとえば「アフタヌーンティー」で、いいにおいのする、かわいいパッケージのハンドクリームを買ったとします。これは自分にとっては、近所のドラッグストアで買うハンドクリームとは意味が違う、特別な買いものです。

「買いもの袋は利用なさいますか?」

と、聞かれます。その店員さんの隣には、「紙バッグ小〇円…」などと印刷されたプレートが立っています。

もちろん、有料で買ってもいいのですが、わたしは主婦です。できればよぶんな出費はしたくありません。そして、もういい年の大人でもありますから、「エコバッグも持参していないのか?」と思われたくもありません。

断って、エコバッグを出して、その中に買ったばかりのハンドクリームを自分で入れる、またはお財布やハンカチやスマホなどでがちゃがちゃしているかばんの中に放り込みます。その時点で、「ハンドクリーム」の新品の魔法はするすると解けて、「ふつうのハンドクリーム」になり下がってしまいます。

また、わたしは「イノブン」でずっと、あるブランドの、いいにおいのする石けんを買っています。

以前なら、「においがするので、ほかのものとは別にしますね」と言って、まずは小さな紙袋に小分けしたあと、紙バッグに入れてくれていました。その心遣いがうれしくて、またこの店で買おう!と思ったものです。しかし最近は、レジを通したら、そのまま突っ返されています。

わたしの大好きな「プラザ」でも、買いもの袋が最近有料化されました。他店が有料化しているなか、プラザは無料配布を続けていたので、その心意気を応援したくて、おなじ商品なら、わざわざプラザまで買いに通っていたほどです。

しかも、お店によっては、プレゼントの場合も、紙バッグは有料です。ラッピングも有料なうえに、「お渡し用」の紙バッグも有料。楽しい気分でプレゼントを選んでも、お金を払ってお店を出るころには、気分はすっかり下がっています。

 

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紙バッグもレジ袋も、広告物

広告物

 

企業にとっては、コスト削減という、よい面が大きいのかもしれません。

しかし、声を大にして言いたいことがあります。お店の紙バッグやレジ袋などのショッピングバッグは、ただの買いもの袋ではありません。あれは、「広告宣伝物」なのです。

確かに、「環境問題」は大切だし、その意識を広めるという面では、買いもの袋有料化はおおいに貢献しているかもしれません。けれども、コスト削減以外の、「レジ袋」や「紙袋」の持っているプラスの面にも、企業は着目したほうがよいと思っています。

買いものをしたお客さんが、商品の入ったショッピングバッグを持って街を歩く。人は、動くものにはつい目が行きます。真新しいショッピングバッグに、大きくロゴが描いてある。そうすると、人は、「近所に、あの店があるのだな」と気づきます。すてきな人が持っていれば、「あの人は、何を買ったのだろう」と想像をめぐらせる。異性が持っていれば、「どんなプレゼントを買ったのだろう」と自分の身に置き換えて考える。お年を召した人が持っていれば、「あの年齢になっても買える商品が、あの店には置いてあるのだ」と将来の買いものに希望を持つ。ショッピングバッグは、無言でよく働きます。そして結局は、お店に人を呼び込むことになるのです。

ですから、長い目で見ると、買いもの袋有料化は、企業にとってはマイナスになると考えています。最も効果的な広告宣伝費を削っているからです。何よりも、買いものをつまらない行為にしてしまった責任は大きいと思います。

わたしがよい例です。

もう、アフタヌーンティーやイノブンやプラザでは、買いません。買いものという夢を、見られないからです。

最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。

※追記  2020年2月現在、イノブンは「買いもの袋無料提供」に変更となっています。

 

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学習塾を経営しながら、発達障害グレーゾーン中学生の息子・天を絶賛子育て中。 楽しかったり楽しくなかったり、うれしかったりうれしくなかったりする天との毎日を、母の目から率直につづります。