遠くの目標は壮大

発達障害グレーゾーンの高校生・天の目標は、いつだって壮大です。

ふり返ってみれば数年前、「(進学校である)あっぱれ高校に行きたい」と宣言したのが、壮大な目標のはじまりだったように思います。このブログも、そこから出発しています。当時の天の成績は中の上くらいで、努力しだいでは進学校に合格できるかもしれない、この発達障害グレーゾーンの中学生がはたして合格にたどり着けるのか、記録として残してみようかと考えたのがはじまりでした。

壮大な目標が生み出す周囲の期待をみごとにけ散らし、中学時代、天はまったく勉強しないままうまく受験をすり抜けて、現在の高校に通っています。

そして、天の現在の目標は、「指定校推薦で大学に行く」です。

天が通っている高校は指定校推薦が充実しているらしく、その枠に入りたいのだそうです。

受験勉強ができないタイプであることはすでに証明されているので、受験を回避して大学に行こうという発想には「自分をよくわかっているな!」と評価する一方で、「またまた・・・やれやれ」と少々あきれてもいます。

その理由はふたつあります。

まず、指定校推薦を受けるには、それなりの成績が必要です。枠は数名なので、学内で常にトップクラスにいる必要があるのです。

けれども高校に入ってから、天が勉強しているところを見たことがありません。中学時代と同じく、一秒も勉強していません。成績は悪くないようですが、周りが真剣に勉強を始めれば、下がっていくでしょう。

そして、アトピーの悪化で入院するなど、欠席や遅刻が多くなっています。それだけでもマイナスなのに、授業内に受けるべき小テスト類も満足に受けられていません。これでは内申点は期待できないのではないでしょうか。

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目標とは

そもそも天は、「目標」の意味がわかっているのだろうか、と疑っています。

「学研現代新国語辞典」によりますと、「目標」とは

「そこまで行き着こう(成し遂げよう)として設けためあて」

とあります。

天は目標を立てるのは好きなようです。夢や憧れは人並み以上に持っているのです。ですから目標を立てた時点では、その気持ちは本物だと思います。

しかしながら、目標を立てたら、そこに行き着くために、毎日毎日自分を磨く必要があります。

指定校推薦をねらうなら、まずは内申点を上げるべく遅刻と欠席を減らすために

●早起きできるよう、前の晩に早く寝る

●アトピーを悪化させないよう、毎日のケアを怠らない

という基本的な生活習慣が必要になります。勉強面では

●毎日こつこつと勉強して、常にそれなりの成績をあげておく

ことが大切です。

「目標」と「毎日の行動」はふたつそろってはじめて、実現へと向かいはじめるのです。そして当然周りは、当人がその「ふたつ」を行う覚悟を持っているものだと考えます。

しかし現在のところ、天はそれらの行動をとっていません。天の目標にはいつも、「セットの行動」がないのです。

遠くの目標は確かにあるけれども、それは単に遠くに眺める星のようなものであって、それに向かって確かな一歩を踏み出す、たとえば明日の小テストのために勉強しようという気持ちはさらさらないのです。

目標に至るにはどうすべきか、という客観的な視点がない。毎日の積み重ねの結果、目標へと至るのだという地道な発想がない。

今自分がすべきことがぼやけてしまう、発達障害の特徴が出ています。

目標はふわふわと浮いたまま、結局達成できないままかき消えてしまうのです。

 

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目標は聞き流す

親は、子どもが夢や目標を持ってくれるとうれしいものです。

夢が大きければ大きいほど、親の期待もふくらんでいきます。宣言するくらいなのだから、当然、それに向かって努力を重ね、目標を達成するものだと期待します。そして、目標が実現する日をわくわくしながら待ちはじめます。いや、実現するかどうかよりは、子どもがいきいきとがんばる姿を見たいのです。

しかし、天の場合、行動が伴いませんから、しだいにその期待に疑問符がつき始めます。おかしいな。何もやっていないけど、どうなっているのかな。いつから始めるのかな。もう少し待ってみよう。そうは言っても、逆算すると、そろそろなんとかしないとまずいのではないかな。あんなに寝ていていいのかな・・・と、なぜかこちらが自問自答を始める展開になっていきます。

天に「確か、こういう目標じゃなかったっけ?」と確認してみると、真面目な顔で「そうだよ」と答えます。そして「やるときはやるから」などと言っています。やるときって、いつだ?

やがて、

ああ、やっぱり・・・!

と、暗くなる日がやってきます。天が目標を口にしたときには、絶対に期待せず、聞き流すことが、わたしの心の健康のためには大切です。

しかし大きな流れで考えてみると、不思議なことに、たとえ夢のとおりではなくても、天にとってよい方向に物事が進んでいるのは確かなのです。

ですから、夢にとらわれることはない。夢を実現するだけが人生ではない。

つい目標に向かってがんばりがちなわたしに、天は何かを教えてくれているような気さえしています。

ただ、これからも、何度も何度も、期待してしまうでしょう。そして、何度も何度も裏切られるでしょう。

仕方がありません。だって、親だから。

けれども一瞬は天とともに夢を見て、どきどきしたり、わくわくしたことは事実なのです。

その気持ちだけを抱いて、これからも、天と一緒に生きていくのだなと思っています。これはこれで、ちょっと楽しい。

最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。

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学習塾を経営しながら、発達障害グレーゾーン中学生の息子・天を絶賛子育て中。 楽しかったり楽しくなかったり、うれしかったりうれしくなかったりする天との毎日を、母の目から率直につづります。