ペアレントトレーニングの実際

ペアレントトレーニング

ペアレントトレーニングは、心理療法プログラムのひとつです。

親が子どもへの接し方を学ぶことで、子どもの問題行動を減らし、親子関係の改善へと導いていくものです。特に発達障害の子どもへの関わりにおいて好影響があると考えられています。

もちろんわたしも、取り組んでみました。

方法は、いたって簡単です。

まず、子どもの行動を、「好ましい行動]「好ましくない行動」「排除したい行動(危険な行為)」の3つに分けます。「好ましい行動」は、どんどんほめます。「好ましくない行動」は、見守りつつ無視をして、行動が収まるのを待ちます。「排除したい行動」には、適切なペナルティを与えます。

これをくり返すうちに、好ましい行動が強化されていく、というものです。

なるほど、と思いました。すごく理にかなっています。

やってみない手はありません。独学ではありますが、チャレンジしてみることにしました。

まずは天の行動を3つに分けました。

好ましい行動

●家に帰ってきたとき、郵便受けをチェックして、郵便物を持ち帰ってくれる

●ゴミを集めるのを手伝ってくれる

●ゴミ出しをしてくれる

●わたしが家事中ヘマをすると、必ず「どうしたの?」「大丈夫?」と声をかけてくれる…など

好ましくない行動

●朝ギリギリまで起きない

●ごはんに呼んでもすぐに来ない

●嫌いなものは食べない

●出したものを片づけない

●脱いだ服を洗濯カゴに入れない

●お風呂になかなか入らない…

挙げるときりがありません。

排除したい行動

●夜遅くまで起きている

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いよいよトレーニング開始

開始

行動を分けたら、「ほめ」と「無視」を始めます。

このとき注意しなければいけないのは、100%できるのを待ってほめないことです。

たとえば、「ごはんを食べたら宿題を始める」を好ましい行動とするなら、まず筆箱を出したところでほめる。ノートを出したらほめる。教科書を出したらほめる。と、少しずつほめること。

これがプラスの循環になれば、子どものやる気に火がつき、「ほめる」だけで「子どもが動く」ことになります。

…のはずですが、実際にやってみると、そううまくは運びません。試行錯誤の必要な、相当高度なプログラムだな、と思わされます。

たとえば、行動を分けるとき、かなり具体的な行動を思い浮かべて分けていくのですが、日常の行動は、細分化されて順序よくやってくるわけではありません。いろんな行動が組み合わされて同時に出現します。

たとえば、「ごはんをテーブルで、みんなで食べる」という、強化したい行動があったとします。

ごはんができたので、「天、ごはんができたよ」と呼んだら、今日はすぐにテーブルにつきました。

これは「好ましい行動」です。ほめるべきところです。

しかし、ふと見ると、足がいすの上に上がっている。つまり、テーブルにはついたけれども、お行儀よく座っていないのです。

しかし、心を落ち着けて、「ちょっとずつほめ」を始めます。

まず「すぐに来たね。うれしいよ」と、すぐにテーブルについたところをほめます。

天が、ほのかにうれしそうな表情を浮かべてごはんを食べ始めます。ひとつめは成功です。けれども、わたしは満足できません。なぜなら、天の足がいすに上に上がったままだからです。

こういうとき、親は気持ちをどんどん切り替え、判断をくり返していかなければなりません。つまり、足が上がっていることは無視しながらできていることをほめ、タイミングを見計らって「足を下げた方が姿勢がよくなるよ」などと注意を促し、すぐに足を下げない場合は見守りながら無視を続け、「きらいなものは食べない」という行動も無視し、かつ、足を下げたときにはすぐにほめなければなりません。

自分に余裕がないときや疲れているときなどは、もうお手上げです。ペアレントトレーニングとは、まさに言葉どおり、親にとってのトレーニングなのです。

そして、何よりもむずかしいのは、「無視」です。

子どもが「好ましくない行動」をとったときに、その行動に注目しないで、行動が収まるのを待つわけですが、これには並大抵でない精神力が必要です。

感情をたかぶらせない。しかし、目の前で、感情をたかぶらせずにはいられない事態が進行しているのに、見て見ぬふり、いや、目の中には入れながら心を動かさない、というのは、すごくつらく、苦しいことです。水の中に潜って、もう息がないのに、まだ浮かび上がることができずじたばたしている、そんな状態です。

しかも、この状態のまま、「好ましくない行動」が終わったときのために、ほめる準備をしておかなければなりません。水の中でもがきながら、どうやって自分が助かるか、ではなく、子どものよりよい未来について考えなければならないのです。

しかもその状態は、ごはんを作りながらだったり、片づけをしながらだったり、日常のあちこちに存在するわけです。

ですから、ペアレントトレーニングは、プログラムへの深い理解と、強い意志がなければ継続はむずかしい、と言うのが実感です。

わたしの場合は、ペアレントトレーニングを実践しようと決めて行う→2~3日は続く→しかし、天の行動のほうがわたしの忍耐力を上回り、結局怒りが爆発する→反省

というサイクルをくり返しています。

けれども、これでよいと思っています。自分のできる範囲で、ちょっとずつ進んでいくしかありませんし、その過程が子育てだと思います。しかも、そのサイクルの中には、確かに「うまくいった」瞬間が存在するのです。だから、わたしはペアレントトレーニングの継続を、あきらめてはいません。

ひとつ言えるのは、子育てにおいては、怒りは表に出さないに越したことはない、ということです。怒りにまかせてぶつけてしまった言葉は、取り返しがつきません。特に天は、きつい言葉にはとても敏感です。他人にはけっして言わない言葉を、自分の子どもに言ってしまっていいわけはありません。だからこそ、ペアレントトレーニングが必要なのだと思います。

さあ、今日もがんばろう。

最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。

 

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学習塾を経営しながら、発達障害グレーゾーン中学生の息子・天を絶賛子育て中。 楽しかったり楽しくなかったり、うれしかったりうれしくなかったりする天との毎日を、母の目から率直につづります。