発達障害グレーゾーンの息子・天のアトピーが悪化の一途をたどり、とうとう入院することになりました。
かゆみと痛みで学校に行けない日が続き、皮膚科の先生が「こんなしんどい目に遭わせてしまって・・・ごめんなさい」と、大きな病院を紹介くださいました。高度治療でなければもう治す手立てがない、という判断です。
大病院での診察初日、先生は、全身に炎症が出ている天のようすを見て、びっくりされたようでした。
当時の天は、特に顔にひどい炎症を起こしていて、目の周りまで腫れ、それをかきむしるので、傷だらけになっていました。重病の患者が多い大病院の待合室でも目立ち、斜め前に座っていたおばあさんが首を伸ばして天の顔をのぞきこもうとするので、わたしが盾になって隠していたほどです。
「夜、寝られているのかな?」
先生が心配されていたのは、このことでした。
「寝たり起きたり・・・」
と天は答えていましたが、ほとんど寝られていないことを、わたしは知っています。
夜中、ボリボリガリガリと肌をかく音がして、声をかけると、必ず返事をするからです。
「注射とか飲み薬とか、アトピーの新薬はたくさん出てきているからね。どれを使うかはゆっくり考えていくとして、まず、入院しようかな?」
入院?
先生の口からその言葉が出て、ああそうだ、そういう手があるのだ、とからだじゅうの力が抜ける思いがしました。
今まで背中をさすったりお薬を塗ったりサプリメントを飲ませてみたり洗濯洗剤を替えたり掃除をすみずみまでしたり温泉につれていったり、やれることは全部やって、てんてこまいの毎日を送ってきたけれど、もうこれ以上は無理だな、というところまでわたし自身が追いつめられていました。
先生がおっしゃるには、新薬を試すには、ステロイドなどを使った標準治療を半年間続けていることが条件になる。天が標準治療に復帰してまだ5か月なので、あと1か月。その間の治療として、まず入院、というわけです。
「炎症が皮膚だけではなく体内でも起こっているから、それを抑えるところから」
とのことで、その場で入院が決まりました。
天はとまどったようです。入院すれば、学校もしばらく休まなければなりません。ただ、いちど家に帰って準備するなかで気持ちを切り替えたようで、はじめての長期入院に「わくわくしてきた」と明るい顔をしていました。
入院といっても、特別な治療をするわけではありません。
まず、薬をきちんと塗ること。町の皮膚科では、塗り薬もそう大量には出せないため、塗る量が足りていないことが多いそうです。先生の指導のもと、薬の適量と塗り方を覚えること。そして、体内からも薬で炎症を抑えること。
そのふたつの方針のもと、約一週間の入院です。先生がおっしゃるには、環境を変えることで、劇的によくなることも多いそうです。家というのはいろいろいろいろあるそうで、やはり病院という管理された環境で、ストレスを減らすことが大切だということでした。
面会は一日一回、15分。
毎日着替えを持って面会に行きましたが、会うたびに症状はよくなっています。顔は塗り薬でてかてかと光って傷も治り、よく寝られているせいか表情も穏やかです。
朝は先生みずから薬を塗ってお手本を見せてくれて、夜は自分で塗るそうです。
飲み薬はステロイド剤とかゆみ止め。
おかげでかゆみがなくなり、ぐっすり眠ることができたようです。夜は10時に消灯で、朝は5時に自然に目が覚めてしまうとのこと。なるほど。朝の苦手な天ですが、早く寝れば早く起きられるわけですね。
スピード回復、ただしIgE値50000超え
規則正しい入院生活で、天は4日目にして退院となりました。先生の予想よりずいぶん早い回復です。まさに「入院の力」を見せつけられました。
ただ入院中の血液検査で、IgE値(アレルギーの起こりやすさを示す値)が「50000超え」という驚異的な数字(基準値は232以下)が出ました。これはあまりない、いやめったにない数字だそうで、先生も「うーむ」とうなっておられました。
つまりはこれからも、天は細心の注意をはらって日常生活を送る必要があります。ダニ、ハウスダストの数値は振り切っており、念入りな掃除が必要です。そして飲み薬と塗り薬という基本的な処置。これを徹底して行っていかなくてはなりません。ルールを守るのが苦手な天にとっては、少々高いハードルかなとは思います。
ただ、今天は元気に学校に通っています。かゆみがないので上機嫌で、毎日が楽しそうです。
ああ、それだけで。
それだけで本当にうれしいと、母は思っています。
最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。