発達障害の、勉強の困りごと3つ

息子である天の発達障害について考え、わたしなりの試行錯誤をお伝えするのがこのブログの趣旨ですが、今回は、発達障害のお子さん全般についてのお話とさせていただきたいと思います。

わたしは小さな塾を経営しており、通ってくるお子さんの中には、発達障害の子が少なからずおられます。そのお子さん方の学習のようすをお伝えすることが、現在悩んでおられる保護者の方の役に立つのではないか、と思ったからです。

 

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今からお話しする、発達障害の子どもが直面するであろう困りごとは、わたしが日々の指導の中で実際に経験していることです。ひとくちに発達障害といっても、症状は人それぞれで、日常生活にまったく問題がない場合も多数見られます。けれども、以下の3つが当てはまる場合は、学校の勉強についていくのはむずかしいのではないか、と考えています。

①字が書けない

年長の幼児さんで多いのが、「なかなか字が書けるようにならない」と保護者の方が困り果て、つれてこられるケースです。

ひらがなやかたかなは、小学校で一から学習しますから、急ぐ必要はまったくありません。幼児さんのあいだは楽にかまえて、本を読み聞かせたり、歌を歌ったりして言葉に親しむことが、文字を覚える前段階としてとても大切です。保護者の方にもそのようにお話ししています。けれども、文字に「まったく関心がない」のは、要注意です。

子どもは好奇心をもって世界を見ていますから、ある程度の年齢になれば、大人が書いている字、読んでくれる字に興味を持って、まねをして字を書いてみたり、読んでみたりし始めるものです。それをまったくしないというのは、すでになんらかの問題を抱えているのです。

そのような幼児さんには、まず運筆の練習から始めます。

えんぴつを正しく持って、まっすぐ線を引く。ぐるぐる円を描く。止めたいところで止まることができる。この動作ができることが、字を書く基本です。

けれども、「字が書けない」と相談に来られる幼児さんのほとんどは、この運筆でつまずきます。

まず、どのお子さんも、手にひどい緊張があり、がちがちに固まって、自由に動かすことができません。そういう場合、上から手を握っていっしょに動かします。けれども、なかなか動き出すことができず、またいったん動き出すと、止めることができません(写真)。

 

 

いちど手を休めて、手をぶらぶらふって力を抜いてみるのですが、えんぴつを握ったとたん、またがちがちに固まります。その状態でえんぴつを紙に押しつけるので、筆圧が非常に強いです。

実際にやっていただくとわかると思いますが、ぐるぐると円を描く場合、手に遠心力が生じますから、描き続けるうちに力が抜けて、楽に描けるようになってきます。けれども、発達障害のお子さんの場合は手が固まっていて全力で紙にえんぴつを押しつけていますから、まさに全身運動、すぐに疲れ果てて、長く描き続けることができません。

また、わたしたちはただ線を引く場合でも、長い線を引くときと短い線を引く場合では、知らず知らずのうちに手にかかる力加減を変えています。そうして、線の太さや濃さを調整しているのです。

けれども、発達障害のお子さんは、どんなときでも、濃く、太く、線を引いてしまいます。「調整」することがむずかしいのです。

ただ、手を使う運動、たとえばボールを投げたり、なわとびをしたり、といったことに問題がないことが多いようです。このあたりの関連にについては、わたしもよくわかっていません。

 

②色を塗ることができない

幼児さんの課題で、「色を塗る」というものがあります。まるや三角形、四角形に色を塗るだけなのですが、これは、その形に塗ることで、「図形を体感」しているわけです。

 

ですから、すみからすみまで塗ることが大切なのですが、発達障害のお子さんは、形どおりに塗ることができません(写真)。塗りたいところだけ、つまんで塗ってしまいます。または、はみ出してしまいます。これには前述したような、「なかなか手を動き出せず、また動き出すと止めることができない」ことや、「全力で紙にえんぴつを押しつけてしまうので疲れてしまう」という面もあるかとは思いますが、それよりは、「すみずみまで注意を払う」ことに興味が持てない、とわたしは見ています。

すみずみまで注意を払う、ということは、勉強にはとても大切なのです。性格がおおざっぱ…なども考えられますが、何も、朝から晩まで注意を払っていなければならないわけではありません。目の前の、一枚のプリントの、すみからすみまで注意を払えばよいだけです。

しかし、そこで集中力を発揮できないとなれば、その先の計算などで注意を払うことは、とてもむずかしいのです。それこそ「つまんで計算をする」「つまんで読解をする」ということになってしまいます。

 

③数の感覚がわからない

わたしたちがふだんなにげなく使っている数字というものは、実際はかなり高度な理解力を必要としています。

たとえば、「りんごが5個」という場合、りんごが5個、つまりたくさんある状態を、5というたったひとつの数字で表します。数字というものは、集合体をひとつの字で表しているという点で、非常にすぐれた文字なのです。

幼児さんの場合は、まずは絵で実際の数を見せ、数えさせます。それがじゅうぶんにできたあと、数字に代えていきます。たいていのお子さんは、うまく数字に変換できますが、たまにそうでないお子さんがいます。

こういうお子さんは、5と6という数字を並べた場合、どちらが大きいか、わかりません。5という数字に隠された意味を、理解できないのです。見た目の数と、数字が結びつかない。

このようなお子さんの場合、たし算やひき算は問題なくできることが多いです。3+5を単なる「数字の式」として、答えを覚えてしまうからです。

ただ、「大きな数」といわれる、十、百、千、万、といった位の数が出てきたとき、混乱をきたしてしまいます。「千は百が10個」といった、数の仕組みが理解できていないためです。

 

ぜひ、専門家の診断を

以上が、わたしが考える、発達障害のお子さんの、勉強に関する困りごと3つです。

もちろん、多かれ少なかれ、子どもの成長には偏りがありますから、今の一時期だけを見て、発達障害と断定することはできません。

ただ、これら3つが当てはまる場合は、あくまでもわたしの経験からですが、保護者の方の努力だけで良い方に向かうことはむずかしい、と感じています。ぜひ専門家に相談されることをおすすめします。

最後までおつきあいただき、ありがとうございました。

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学習塾を経営しながら、発達障害グレーゾーン中学生の息子・天を絶賛子育て中。 楽しかったり楽しくなかったり、うれしかったりうれしくなかったりする天との毎日を、母の目から率直につづります。