経営している塾には、程度の差はあれ発達障害のために勉強がなかなか進まないお子さんも来られています。
基礎的な学力がないだけでなく、いちど理解してもすぐに忘れてしまう、気分にムラがあってできるときとできないときの差がありすぎる、どうしても集中できない、きらいな単元は絶対に取り組まない、まちがえると機嫌を損ねてしまってそれ以上進まない・・・などの困難を抱えています。
そして、そのようなお子さんを持つ保護者の方はたいてい、家で勉強を見ておられます。仕事をしていたり、きょうだいがいたりしていても、時間をとって、ねばり強く一緒に勉強されています。
これは並大抵のことではありません。
親子だからこその甘えが出やすいなかで、子どもがやる気になるのを待ち、わがままに耐え、つい怒りたくなるのをこらえ、そのうえで子どもが理解するまで何度もくり返すというのは、至難の業です。
保護者の方には、本当に頭が下がります。
勉強ができなかったら、この子はどうなるのだろう。
保護者の方が強い危機感を持っており、現状をなんとか打破したい、自分ががんばることで子どもの将来が開けるのなら、と考えておられます。また、子どものほうも、親が勉強を大事に考えていることを理解していて、進んで、とは言わないまでも、その気持ちに応えようとしているわけです。けんかしながら、泣きながら、という話も聞いています。
ただ残念ながら、発達障害の特徴を持ったお子さんの学力が劇的に伸びて、有名高校や大学に行くことはほぼないと考えています。
学力が伸びるには、「点と点がつながって線になる」ことのおもしろさがわかることが重要です。単元を越え、科目を越えて、理解がつながったとき、はじめて勉強の意味がわかり、さらに深みへと進みたくなるのです。しかしこのようなお子さんは、ひとつひとつの単元は理解したとしても、それぞれの関連にはまったく興味を示さないことが多いのです。
では、このような努力が無駄かといえば、けっして無駄だとは思いません。
一緒に勉強することで、その子が「わかった!」とにっこり笑ったとき、それは親にとって何よりの喜びではないでしょうか。また、テストでよい点がとれた。それは、その子の一生を支える糧になるかもしれません。何よりも、一緒に目標に向けてがんばる、それは何物にも代えがたいコミュニケーションです。すばらしい思い出として、子どもの心に刻まれるはずです。
保護者の方には、この一瞬一瞬をかけがえのないものとして楽しむつもりで、取り組んでほしいと思います。疲れたときは、休みながら。子どもは必ず、親の期待に、なんらかのかたちで応えてくれます。
最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。